両親が残したのは実家の建物と土地だけ。現金などはほとんどないですし、兄弟の仲も良いので相続でもめることはありえないと思います。
兄弟の仲が良いご家庭、また財産の少ないご家庭でも相続争いは起きてしまいます。その理由について解説します。
被相続人(遺産を残す人)の生前はとても仲の良かった家族が、遺産分割になった途端にそれぞれの分割割合を主張し、家族内で紛争が起きてしまう。映画やドラマの話に聞こえますが、実はとても身近で訴訟も頻繁に起きている事例です。
相続争いに財産の多い少ないは関係なし
相続争いで裁判にまで発展した事例のうち、全体の32%は遺産額が1,000万円未満の事例です。
家と土地、少額の現金のみの相続でまさか仲の良かった兄弟間で遺産争いが発生するとは想像すらできなかった人ばかりです。 相続に関しては財産の有無が問題ではありません。原因はもっと別のところにありますのでご注意ください。
相続争いの原因はコミュニケーション不足
訴訟に発展したケースを見てみると多いのが、実家を引き継いだ兄弟と実家を出て行った兄弟間での争いです。
家を継いだ兄弟からすれば「親の面倒は自分が見た」という自負があります。家を出て行った兄弟もそれは重々承知しているつもりでも相続の手続きを進めるうちに問題が大きくなることがあります。相続争いの1番の原因はコミュニケーション不足とも言われています。
家を継いだ兄弟が「阿吽の呼吸で他の兄弟も理解してくれるだろう」と遺産分割協議をすることなく勝手に相続手続きを進めてしまう。本来、会って話し合うべきところをメールだけで済ませてしまう。など、些細なコミュニケーション不足から大きな相続争いにまで発展するケースが後を立ちません。
また多いのが、遺産分割協議の中で相続人ではない第三者が横槍を入れてしまうケース。多くの場合、相続人である兄弟の配偶者です。
「分配方法がおかしい」「分配率が少ない」など、兄弟間では納得できる分割協議だったものが、第三者の口出しで大きな問題へと発展するケースです。この場合、兄弟間だけではなく、各家庭内でも相続人本人が配偶者に対して、経緯の説明や自分の気持ちなどをしっかり話し合い納得した上で分割協議に参加する必要があります。
遺産が土地だけでも安心できない相続事例
遺産が土地と建物だけだからと安心するのは大きな間違いです。遺産が分割できない土地や建物だけだからこそ発生する相続争いもあります。
ある事例では、被相続人が兄妹2人に残したのは実家の土地と建物だけでした。兄は実家に住み続け、妹は結婚して別の場所に家を建てて暮らしています。この場合法定割合では兄と妹にそれぞれ遺産の1/2が渡ることになります。兄妹間では実家は兄が継ぐと理解していましたので、争いになる要素はないはずでした。
ところが妹の配偶者である夫が事業に失敗し、多額の借金を抱えることになったのです。遺産を借金の返済に充てたい妹は兄に対し、土地を売却するか評価額の半分を現金として支払って欲しいと求めたところ、兄はこれを拒否。裁判にまで発展したケースもあります。裁判では和解が成立し、できる限りの現金を妹に支払うことで合意しました。
「財産がないから」「兄弟の仲がよい」という前提で話を押し進めてしまうと、大きな問題に発展しやすい場合もありますので注意が必要です。どんなに仲の良い兄弟であったとしても、相続に関する話題は日頃からしっかりと話し合っておくべき問題だと思っています。